ラブ☆ヴォイス
「お前の第一印象は最悪だった。」

 今までの話を総括すれば、おそらくはそういうことになるだろう。また同じように自分を傷付けるやつが傍にきたと思うのは、仕方のないことにも思える。

「あぁーまたかよ、俺をファンとして好きなくせに恋愛だと勘違いして近付いてくるバカな奴、しかもチビ。…そんな印象。隣人だし、変に懐かれるくらいなら関係自体をばっさり切りたかった。というか、俺に幻滅して近付かないでほしかった。お前の想像している声優御堂明博は幻想で、本物の俺はもっと最悪な奴だって思わせておきたかった。恋愛なんてもう誰ともする気ねぇよって。…なのにお前、本当にめげねぇんだもんな…。」

 耳元であっくんが囁くように言葉を落としていく。内容が内容だけに複雑な気持ちにはなるが、先生ボイスにドキドキが止まらない。…ってこんなこと言ったら、あっくんはあたしがあっくんをファンとして好きなんだって思ってしまうのかもしれないけれど。

「んでタツが妙にお前のこと気に入って、なんだかんだ家に来るようになったり、タツがお前を色々巻きこんだり…。でもさ、不思議なんだよな…お前、俺がどんだけ冷たくしても本当にめげねぇの。…なぁ、何でなんだよ?どうしてお前はずっとそうやって真っすぐでいられるんだ?」

 あっくんの顔が肩の上からすっと上がって、より一層強く唯を抱き締める。あっくんの香りが、唯の全身を包んで思わず香りに酔いそうになる。

「おい、なに呆けてんだ?」
「だっ…だってあっくんが…ぎゅってしてくるから…。」
「顔見られたくねぇんだよ。いいから答えろ。なんでだよ?」

 答えろと言われたから考えてみる。どうして、自分は真っすぐでいたのだろう。でも、どれだけ考えても自分が真っすぐでいる理由なんて、言葉にできないような気がした。

「…うーん…あ、でもね、確かにあっくんがあたしのイメージしてたあっくんとは全然違って、全くがっかりしなかったのかって言われたらそうじゃないよ。…うわぁ…全然違うんだなぁって、それは普通に思ったし、イメージがガラガラ崩れていったのは本当。」
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