ラブ☆ヴォイス
* * *

「んー…ふわ…ぁ…ん…。」

 隣で寝息を立てて、緩みきった顔をしている唯。食事を済ませ、風呂に入って気がついたら寝てしまっていた。待て、夜はこれからだと言いたいところでもあるが、己の行動を振り返れば、彼女がこうなってしまうのも無理はない話ではあった。

「ちょっとやりすぎたか…。」

 ほぼ半日ゆでダコ状態にしてしまったわけだし、疲れても仕方がない。ゆでダコ状態が面白くてわざと色々やったのも事実だ。
 いちいち新鮮な表情を見せてくるから、自分もついつい楽しくなってしまっていた。照れた顔も、涙を瞳いっぱいに溜めている姿も、前に見たのとはどこか違うように感じられるから不思議だ。
 明日から仕事で、結構しばらく続く。こんな穏やかな時間は、少しお預けかもしれない。

「ん…。」

 寝返りを打って、こっちに顔が向いた。…ったく本当に腑抜けた顔しやがって。少し乱れた髪を軽く撫でて戻す。

「…夢…なの…?」

 ふと零れた寝言。…どんな夢見てんだよ、こいつ。

「ふふ…夢じゃない…。」
「それは夢だぞ、お前…。」

 夢を夢じゃないって思って現実を夢だと言う。不可解な脳だ。
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