ラブ☆ヴォイス
「向坂…。」


彼女はどうやらかなり驚いているらしい。
持っていたポテトがポロっと落ちた。


「なんで帰ってないんですか?こんなとこ、他のバイト仲間に見られたらサボったってバレるじゃないですか!
俺、綾瀬さんは高熱が出たらしく家で休んでるって言ったんですよ?」

「…ご、ごめん。
でも、家にいても考えちゃって…。ここ、うるさいからそれだけでも気が紛れるっていうか…。」

「ていうか、そんなちびちび食べるくらいなら俺にくださいよ!
おかげさまで腹ペコです!」

「あ、そうだよね…ごめん。食べかけだけどどうぞ。」

「いただきます。」


綾瀬さんが3分の1くらい食べたポテトに手を伸ばす。
…微妙に冷たくなってる。ったくどれくらいここにいたんだよ。
つーかハンバーガーにいたっては未開封だし。


「あの、そっちも食べないなら貰っていいですか?それ、てりやきですよね?」

「うん。どうぞ。」

「ありがとうございます。」


俺は綾瀬さんからてりやきバーガーを受け取って、ガツガツと胃の中に放り込んでいく。


「向坂は…なんかもう吹っ切れたみたい…だね。」

「え…?」


あまりにも綾瀬さんが力なく呟くから、危うくてりやきバーガーを落とすところだった。

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