ラブ☆ヴォイス

「俺がずっと片思いしてた奴に、彼氏が出来たんですよ。」

「え…。」

「つまり、失恋ってやつです。
…こうなるって分かってたんですけど、ね。」

「分かってたって…？」

「俺の片想いの相手、綾瀬さんみたいに真っすぐな奴なんですよ。
だから気持ちを諦めたりするのがすげー似合わないし、それに…相手の方もあいつのそういうところに少しずつ惹かれてるっていうの、見ててすぐ分かったんです。…すげーぶっきらぼうなのに、大事にしてるっつーか。
なんか言葉では上手く表せないですけど、そういう空気…っつーのかな。」

「…そっか。」


なんでこんなこと、綾瀬さんに話しちまってんだろ…俺。
きっと困らせるし、何の慰めにもならないだろう。
それでも、一度吐き出し始めたらもう全て吐き出すまで止まれそうにない。


「分かってたのに、やっぱり完全に見込みがなくなるとそれはそれで辛い…です。
だから微妙に自暴自棄みたいになって、バイトの態度もあんなんになって…。
ずっと想っていればいつか叶うとか、相手の気持ちを自分に向かせられるとか、そんなのは本当にテレビや映画だけです。現実はもっと酷くて辛い。
…今のとこ、そんな気持ちです。だから全然吹っ切れてないですよ。
綾瀬さんが隣にいるのに、綾瀬さんの真っすぐなところにあいつを重ねて…るくらいですから。」


俺の言葉をただ静かに聞いてくれていた綾瀬さんが口を開く。


「…あたしに似てるんだ？」

「顔は全然です。綾瀬さんの方が美人だし、しっかりしてるし、要領もいいし。
だけど…なんていうか…真っすぐなところはすごく似てます。」

「…だから向坂はあたしに優しくしたの？」

「え？」

「片想いの相手が悲しんでるように見えた？」

「いえ、そんなことは全然。あいつは今幸せいっぱいですし。
俺が綾瀬さんのシフトを変わったのは俺の意志で、別にあいつは関係ありませんよ。」

「…そう。」


綾瀬さんは静かにそう言うと、小さく溜め息を零した。