ラブ☆ヴォイス
「行くあてもないのになんで…っ…。」

「だってどこかに行きたいわけじゃないでしょ?俺も綾瀬さんも。
しいて言えば、泣き場所的な場所に行きたいわけですよ。」

「それはそうだけど…っ!」

「でもそんな場所は今のところ俺にはないし、綾瀬さんにもない。違いますか?」

「違いませんけど!」

「ないなら作ればいいんです。
というわけで適当に走りますから、もういいやってくらい泣いたらそう言ってください。そこで止めます。」

「…なにそれ…。」

「思いつきです。なんか綾瀬さんに話したら少しすっきりしたんで、俺も泣いて全て流しちゃおうかなって。」

「向坂も…泣く…?」

「俺も泣きます。だから綾瀬さんも思いっきりどうぞ。
とりあえず乗ってください。行きますよ?」


俺がチャリに跨ると、綾瀬さんがおずおずと近付いた。


「…重いけど大丈夫?」

「俺の筋力ナメないでください。」

「ナメてないけど…。」


後ろにちょっとだけ重みがかかる。
…よし、乗ったな。


「行きますよー。」

「あんまスピード出さないでよ?」

「分かってますって。」


それ以上、言葉は返って来なかった。
それに俺だって返せなかった。

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