ラブ☆ヴォイス
なるべく交通量の少なくて、人のいない道を選んでチャリをこぐ。


俺の上着を少しだけ握る綾瀬さんの手が時折、何かを堪えるみたいに強くきゅっと、俺の上着を引く。


…静かな道を通れば、少しだけ綾瀬さんが鼻をすする音が聞こえてくる。


気が付けば、俺も涙を流していた。


たとえどんなに涙を流しても、想いまで全て綺麗に流してなかったことになどできはしないけど。
それでも…ため込んでしまうクセのある俺、そして綾瀬さんには少なくとも今、泣く必要があったように思う。


同じ痛さだとは思わないけれど、『恋が上手くいかなかった』という意味では同じ痛みだから。


同じ痛みを持つ人が自分だけではないという安心感。
それがいつしか俺の涙を止めていた。










「向坂…。」

「何ですか?」


どれくらい自転車を走らせたのか、はっきり覚えていない。
そのくらいの時間が経ってから、綾瀬さんが不意に俺を呼んだ。

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