ラブ☆ヴォイス
* * *


「わざわざ送ってもらっちゃってありがとう。」

「いえ。むしろ泣くのに付き合わせちゃってすみません。」

「ううん…泣かせてくれてありがとう。
あたしも少しすっきりした。」

「…なら良かったです。では、俺はこれで…。」


そう言って綾瀬さんに背を向けた時…


「あ、向坂っ!」


少しだけ上着の裾を引かれ、俺はそのまま振り返った。


「…綾瀬…さん?」

「あ…えっと…ご…ごめんっ!
だけど…あ、ほ、本当にありがとうって…言いたくてっ…。」


『ありがとう』という言葉を、俺の目を見て言わない綾瀬さんなんて珍しい…というか初めてだ。
ふと目に入った綾瀬さんの耳が、ほんのりと赤い。


「…これ以上言葉が上手く見つかんないんだけど…
ありがとう。…向坂がくれた言葉も全部…嬉し…かった。ホントのホントに…ありがとう。」


最後の『ありがとう』だけはしっかりと目を見て言ってくれた。
その顔が…少しだけ涙で潤んでいて、でも…ちょっとだけ赤くて、俺の見たことのない…綾瀬さんで…。



ドキっ…!


…おい、なんだこれ。おいおい、落ち着け俺の心臓。


俺の心臓が、妙に早く動く。


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