ラブ☆ヴォイス
「いえっ…じゃ、またバイトで。」

「…う、うん。こ、今度ちゃんとお礼するから…。」

「そんな気を遣ってもらわなくても大丈夫ですよ。
今度は元気にバイトに来てください。」

「うん…。」


綾瀬さんの部屋のドアが閉まる音を確認してから、俺はチャリに跨った。


…やばい。ていうか本当に落ち着こう、俺の心臓。


大体俺は失恋したてで、しかもそれは綾瀬さんも同じで…。


「…バカだろ、何ドキドキとかしちゃってるわけ?」


静かな道路で風を感じながら、一人呟く。
有り得ない有り得ない。
ちょっと綾瀬さんが弱った顔したっていうか、いつも見せる表情とは別の表情をしたからって俺は…!


不意に蘇る、唯の言葉。


『恋の始まりはいつだって突然なんだから!』


その言葉に、今は苦笑を浮かべるほか無かった。





「唯のくせに…たまにまともなこと言いやがって…。」


恋の始まりはいつだって突然。
まだ始まってるかは分かんねぇけど、でも…


「今度のバイト、シフト被ってたかな…。」


そんなことを思う俺は、どうやら新しい恋の一歩を踏み出しているらしい。


*Fin*

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