ラブ☆ヴォイス
「今日、楽しかった。またな?」

「帰っちゃうの…?」

「コレ、結構痛くて。
だから今日、そーゆー気分になれそうにないや。」

「もー!そういう意味で言ったんじゃないのにっ!達也のえっちー!」

「はいはい俺はえっちですよー!」


俺はそれだけ言い残し、目の前の女の頭を軽く撫でた。
それだけで満足するんだ、こいつは。


階段を降り、一人で歩き出すいつもの道。
思い出されるのは『彼女』の強い瞳ばかり。
…そしてひたすらに痛む頬。


「しかし…ってぇよ…。」


鏡を見ていないから確かではないけれど。
…多分手型は100%ついていると思う。


女に殴られるようなことをしている覚えはかなりある。
というか、女に殴られるようなことしかしていない。


…つまり俺はこの当時、来るものは拒まずだったわけで。
さっきの女は数あるうちの一人なわけで。


だけど、俺を殴ったあの子と付き合っている覚えはないんだけど。


「しかしあの子…初対面で殴るとかなんなわけ…?
俺だったからいいけど、人違いだったらさー…。」


独り言だと分かってそう口にした。
無鉄砲な子だ、と本気でそう思った。


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