ラブ☆ヴォイス
「本気じゃないなら付き合うな!今すぐお姉ちゃんに土下座して謝って。」

「それで由実の気が済むならいいけど。
どうやら俺が土下座しても、君の怒りは収まらないんじゃない?」

「あと百発は殴らせてほしいわね。」

「それはちょっとなぁ…。まぁ俳優じゃないから顔潰しても平気だけど。」

「じゃあ潰させなさいよ!」

「待って待って!そう早まらないでって。
さすがに顔面ボコボコに殴られて仕事行けないから。
この前の君のビンタだってすっげー痕残ったんだよ?笑われたし。」

「せいぜいもっと笑われればいいわ。」

「だから待ってって!
…由実には言うよ。」

「何を?」

「俺が浮気してるって。」

「それで?」

「謝罪します。」

「…それで?」

「…それでって…あとどうすれば…?」

「お姉ちゃんと別れるの?あのバカみたいな女が本命ってわけ?」

「…まぁ確かに、この前の子はバカだけど。
別に本命ってわけじゃない。というか、俺にとってはみんな同じ。特別はなし。」

「…意味分かんない。」

「君みたいに真っすぐな子には分かんないだろうね。
これが『大人の恋愛』ってやつだから。」

「そんなのがもし仮に『大人の恋愛』ってやつなら、あたしは一生知りたくないわ。」


あまりにもはっきりと、それでいて真っすぐな瞳でそう言うものだから、俺は反撃の言葉を失った。

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