ラブ☆ヴォイス
「頭…悪いのかな、俺。」

「悪いんじゃない?見た目からしてバカっぽいし。」


そう言って彼女は俺の手を振り払った。その後、俺が触れていた部分をぱっと払う。…そこまでする?


「容赦ないねぇー。」

「容赦なんて必要?」

「必要じゃないよ。」

「そもそもあんたはこのぐらい言われたって別に堪えないでしょ?」


その問いに俺は自問自答した。


堪えては、いない。
むしろこんな風に叱ってくれるというか言ってくれる人を俺は他に知らない。
特に女は俺にこんなこと、言わない。


「ね、名前教えて。」

「チャラ男に名乗る名前は無い。」

「じゃあチャラ男に名乗る名前を作ってよ。」

「芸能人じゃあるまいし、芸名なんて持ってないわ。」

「だから、本名教えてって。」

「嫌よ。」

「なんで?」

「あんたみたいなろくでなしに一切個人情報を与えたくないから。」


それだけ言うと、彼女はくるりと背を向けて歩いて行った。
何故かそれ以上踏み込めなくて、背を追いかけることはしなかった。
…なんとなく、だけど。


もう一度会える、そんな気がしていたんだ。

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