ラブ☆ヴォイス
「着信…お姉ちゃん!」

「かけ直しな。」

「言われなくてもっ…。」


彼女は一度強く目をこすって涙を拭うと、発信ボタンを押した。
プルルル、プルルルと彼女の耳元から機械音が聞こえてくる。





『亜実!?今どこにいるの?』

「今、マンションのエレベーターの中…。」

『一人なの?』

「ううん。一人じゃないよ。」

『さっき、地震が起きたのよ。
それで止まっちゃったみたいなの。電気も止まってるのよ。』

「そんな…。」

『管理人さんに問い合わせてはみるから、とにかく温かくして…あとは落ち着いて待っててね。』

「…うん。」


電話を終えると、また彼女の表情が小さく曇った。
やっぱりケータイの灯りだけじゃ心もとないだろうし、怖いんだろう。


「亜実、って名前だったんだね。」

「聞いてたの!?」

「耳だけはいいもんで。聞こえちゃったんだよ。」

「あっそ。」


力の抜けきってしまっている彼女は、床にへたり込んでいる。
俺はそんな彼女の隣に腰掛けた。

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