ラブ☆ヴォイス
「不思議…だね。」


もちろん応えは無い。
応えなんて元々求めてなどいない。


横顔を見つめてしばらく経つのに、何故かそこから目が離せなくて。
何て言うんだろう。心をぎゅっと掴まれた、そんな感じ。


離したい、なんて思わない。
だから〝離せない〟


視線も、この手も、君から。



そんなことを思っていた矢先、彼女の肩が小刻みに震え始める。
…確かに、寒い。


「仕方ないね。」


俺は彼女から手を離し、ジャケットを脱いだ。
そして彼女の正面から軽く掛ける。


本当は肩を抱く必要はなかったけれど、それでも俺は彼女に手を伸ばした。
脱いだことで寒かったのも事実だし、もう一つ事実を言ってしまえば…


触れたかった。
ただ、それだけの理由。


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