ラブ☆ヴォイス
* * *


「お湯はってあるから、亜実はお風呂どうぞ?」

「…ありがと。」


彼女が部屋の奥の方へと消えていく。


「亜実のこと、目で追ってるのね、ずっと。」


「え…?」


無意識に彼女を目で追う自分を指摘されて、少なからず戸惑う。


「私に話があるんでしょう?亜実のいないうちにどうぞ。」

「なんで話があるって…。」

「達也の顔見れば分かるわ。」


そういう由実の表情は今まで俺が見たことのないものだった。
彼女と同じ、凜とした雰囲気。
…俺は一体由実の何を見てきたのだろうとふと思う。


「…謝りに来た。
亜実ちゃんにすっげー叱られたからだけど。」

「叱られた?亜実に?」

「そう。『お姉ちゃんを悲しませるな』って。」

「亜実なら言いそうね。」

「…悲しませていたんだとしたらごめん。」

「私が何に悲しんでいたか知ってる?」

「うん。だから、ごめん。それと…別れたい。」

「…そうね。そう言うような気がしてた。」


由実はそう言うと、少しだけ切なげに微笑んだ。

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