ラブ☆ヴォイス
「でも、亜実はあげないわよ?」

「え?」

「目で追ってるって言ったでしょう。
無自覚だとしたら鈍感過ぎて言葉を失うわ。」

「…無自覚なんかじゃないよ。」

「あらそう。でもあげないわよ?」

「そう簡単に貰えるもんじゃないって分かってるって。
あの子はそう簡単に落ちそうにない。」

「…分かってるじゃない。」

「まーね。だって初対面で殴られてるし。
大事なお姉ちゃんを傷付けた最低最悪の男だろ、俺?」

「そうね。あなたは本当に最低最悪の男よ、達也。」

「繰り返すなって。分かってるから。」

「でも、私はちゃんと好きだったわよ、あなたのこと。」

「え?」

「なんとなく…だけど、あなたって上手く人を愛してそうに見えてそうじゃないような気もしてて。
だから、ちょっと言い方はおこがましいけど…私がなんとか出来たらなって思ったんだけど…。
あなたに必要なのは私じゃなかったみたいね。」

「…ごめん。」

「謝らないでよ。あなたが悪いんじゃないから。
…でも、一つだけお願い、最後に聞いてくれる?」

「…叶えられるかはモノによるけど。」

「絶対叶えてよ。叶えられるものだから。」

「なに?」

「…あなたが心から大切にできる人を見つけて、ちゃんと愛して。」


彼女の言葉の響きは、今も俺の心の一番奥に残っている。
この時を鮮明に刻んで。

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