ラブ☆ヴォイス
「愛する…?」

「ええ。きっと大切にしたいと思える人のことは、愛したいなんて思う前に愛してしまっているから。
…だから大丈夫よ、達也。」


由実が微笑む。
丁度その時、バスルームの方からバタンと音がした。





濡れた髪、肩にかかったタオル、ほんのりと赤く染まった頬。
部屋着に着替えた彼女がやってきた。






「…あ、ごめ。もしかして話し中…。」

「いいえ。もう終わったわ。
さようなら、達也。」

「…ああ。」



〝さようなら〟と告げようとしていたのは自分のはずなのに、先にそう言われてしまうと、どこか痛い。
…なんて、とても勝手な言い分だ。
それでも事実なのだから仕方がない。


言葉にされて初めて分かる。
由実はとても真剣に俺に向き合ってくれていた。


由実は信じられないほど強くて真っすぐで、温かい。
…彼女の姉だけはある。


「じゃ、俺帰るね。」

「ええ。」


そう言ってリビングに背を向けた。

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