ラブ☆ヴォイス
 …映画の続き、だ。あっくんは映画の続きを作っている。

「『…どうして泣いてるの?』」
「…かな…っ…悲しくてっ…。」

 涙が止まらない。BGMが余計に切ない。

「『…あの日君を置いて消えてしまったこと、僕も悲しかった。でもね、僕は生きていたんだ。幽体離脱、とでも言えばいいのかな。だから僕は君に触れられなかった。でも今は、違う。』」

 あっくんがあたしを抱きしめる腕に力を込めた。

「『ね、今はこうして君を抱きしめられる。こうして君をとても近くに感じることが、できる。もう離れないよ。だからほら、涙を拭いて。そしてどうか、僕に触れて。』」

 どうしよう、余計に涙が出てくる。…本当にこんな幸せな結末になってくれているのかな。あの二人はいつか幸せになれるのかな…。

「…あれ、逆効果?」

 すっかり素に戻ったあっくんがあたしの顔を覗き込んだ。

「…あっくん演技上手…。」
「泣きながら言われてもあんまり嬉しくない。なーくなって。俺の作り話の意味がなくなんじゃん。」
「…ねぇ、あの二人、幸せになれるかなぁ…?」

 つっかえる声をなんとか振り絞って問い掛ける。

「なれるんじゃねーの。お前が願えば。ってそろそろ泣き止めって。」

 あっくんの服の袖がまたあたしの涙を拭った。
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