ラブ☆ヴォイス
【明博side】

パタパタと小さな足音を立てて唯が遠ざかっていく。
その瞬間にふと腕を掴みたくなって、でもそれが怖がらせるだけだと分かっているから止める。


シャワーの音が聞こえ始めてから俺は、唯がさっきまで座っていた場所に座る。もう唯の温もりは残っていない。


「はぁー…。」


あまりにも深い溜め息が落ちた。でも許してくれ。溜め息の一つも零したくなる。何度も拒否されれば、そりゃあ悲しくなる。そして再チャレンジへのハードルが上がっていくってのが男だ。非常に悲しいことに。


「…あんだけ怖がられると…ヘコむわー…。」


触れた瞬間に多分「違う」と分かるんだろう。いつもとは違うその触れ方に、唯はびくっと身体を強張らせる。まるで俺の下心を見透かしたかのように。


「我慢できねぇってまじで。」


正直我慢は何度も限界を迎えている。何度も何度もどうやって我慢してきたのか分からないくらいだ。


大事だと思えば思うほど触れたくて。それこそどこまでも際限なく。
好きだと自覚すればするほど欲しくなる。身体も心も何もかも。


「待つっていつまで待てばいい?」


はっきりいつまでと言ってくれればそれこそ諦めもつく。その日までは我慢できる。…多分。そしてその日が来たら強気に攻めていける。
でも、聞けない。いつならいいんだなんて。ただでさえ、唯がすごく気にしているから。


「…つーか風呂入れとか言ったけど風呂あがりのあいつやべーんだった…。」


邪念しか生まれないあいつの風呂あがりの姿を思って、…どう我慢するべきかを考えていた。

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