ラブ☆ヴォイス
* * *


「あ、あっくん!ご飯ならあたしが…!」

「お前、身体だるいんだろ。別に大したもんなんかどうせ作れねーから座ってろ。トーストとスクランブルエッグ…とコーヒーくらいしか出さねーし。」


ほら、また。
あっくんは優しい。付き合う前はぶっきらぼうな優しさだったのに、今は底抜けに優しい。むしろあたし、甘やかされてるって思うくらいには優しい。


「…何?何で無言?」

「…あっくん、あたしを甘やかしすぎだよ。」

「はい?」

「あたし、甘えたがりだから…甘やかされたら甘えちゃうよ!」

「別にいいけど、甘えてくれて。つーかほんと、何で泣きそうな顔してんだよ?」


そう言われて咄嗟に下を向いた。
カチっと火の止まる音がする。あっくんがあたしの方に近付いてくる足音までする。
あっくんが目の前でピタリとその足を止めた。


「無理に顔上げろとは言わねーけど、…突然どうした?」


あたしはあっくんの服の裾を掴んだ。あっくんはそれを振り払いもせず、そこにいてくれる。


「ん?」

「あっくんのこと…あたし、大好きだよ。」

「知ってる。」

「…あっくんのこと、大事にしたいって思ってるし、…えっと、大事にしてるつもりだよ。」

「大事にされてるって分かってるよ。」

「え?」

「は?なんでここで『え?』なんだよ。大事にされてる、想われてるって知ってるし、だから大事にしたいんだよ俺も。」

「伝わって…る…?」

「充分過ぎるくらい伝わってる。だから壊したくない。お前の身体も、お前との関係も、お前自身の全部。」


あっくんの言葉に顔を上げるとあっくんが優しく微笑んでいた。
その笑みに心の中に少しだけ生まれた不安がすーっと消えていく。

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