ラブ☆ヴォイス
『…今夜は寝かせ、ないから。』
「ひっ…!」

 本当に耳元で囁かれている、としか思えない。離れていったり、近くにきたりする音がまるで本物だ。若干機械音のように感じるところもあるけれど、それでも凄いとしか言いようがない。マイクの技術はここまで進んだのか、と唯は純粋に驚いた。
 しかし、驚いただけでは済まされなかった。

『んっ…あっ…お前…。』
「ひぇえええええ!」

 唯は思わず停止ボタンを押した。

「どうした?」
「っ…今のっ…!」
「だから、そういうのだっつっただろ?」

突然の喘ぎ声に心臓が跳び跳ねた。あっくんのこんな声は、生でしか聴いたことがない、はずだ。

「だって今っ…な、なめっ…。」
「舐める音も吸う音もキスする音もすげー入ってるよ。そういうコンセプトだったからな。俺も初めてやったからすげー疲れたけど。」
「そんなしれっと…!」

…なんだか、悲しい。一瞬しか聴けなかったあっくんの声。それは、凄くないからではなくて、聴きたくなかったから。

「…唯?」
「やだ…。」
「は?」
「こういうのは…やだよ、あっくん…。」

生まれて初めて、唯はあっくんの仕事に嫌だと言った。
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