ラブ☆ヴォイス
* * *

「おーできたぞー。って寝てんのかよ。さすがに起きろ。つーか熱測ってねぇだろ、唯!」
「…んあ?あ、あっくん…あたし…寝てた…。」
「起こして悪いけど、うどんがのびるのはもったいねぇから。」
「ごめんね!起きます。」
「お前のには劣るけど、食えなくはない。」
「あはは、大丈夫だよ。ありがとう。いただきます。」

 唯はゆっくりと身体を起こし、うどんののったお盆に手をのばした。

「あーちっちゃいお椀、持ってくればよかったな。待ってろ、今持ってくる。」
「ううん。このままでも大丈夫だよ。」
「風邪ひいた上に火傷させられるか。大丈夫だから、待ってろ。」

 ポンと軽く、あっくんの手が唯の頭に触れた。両想いになって2年以上が経ち、あっくんの優しさはとどまるところを知らない。出会ったあの頃、あれだけ冷たかったのが嘘のようだ。

「箸、寄越せ。」
「?」
「量あんまり作ってねぇけど、そんなに食わないよな?」
「うん。丁度いい量だよ。ありがとう。」

 少しだけ盛られたうどんをふーふーと冷まして口に運ぶ。丁度良い温かさと、優しい味が口の中に広がった。思えば今日、身体があまりにもだるくて何も食べていなかった。

「お前、俺が作っていったサンドイッチ食わなかっただろ。」
「え、どこにあったの?」
「テーブルの上に置いておくっつっただろ、出がけに。」
「ごめん…意識が朦朧と…。」
「だと思ったけど。」
「あ、それとあっくん!今日のホテルのディナーって…。」
「あー…あれな。タツたちに譲った。キャンセル料もいらねーって。」
「…ごめんね、あっくんがせっかく用意してくれたのに…。」

 唯だって行きたかった。体調がいつも通りなら。ホテルでのディナーを成功させるためにテーブルマナーも勉強したし、ワンピースだって新調した。それなのに、…風邪なんて、バカみたいだ。
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