ラブ☆ヴォイス
「なーにヘコんでんだよ。つーかヘコんでんのは俺だっつーの。」
「え?」
「何でもない。早く食べて寝ろ。あ、その前に着替えか。風呂は入るな。」
「き、着替えはいいよっ、自分で持ってくる。」
「今更お前の何を見ても恥ずかしくねぇよ、何年付き合ってると思ってんだ。」
「あっくんは平気だと思うけどあたしが平気じゃない!熱上がる!」
「動く方が熱上がるっつの。下着まで変えたいんなら持ってくるけど?」
「いっ…いいもん!大丈夫!」
「じゃあパジャマの替えは持ってくる。うどん、ちゃんと食ってろよ?あ、食べさせた方がいい?」

 あっくんが口角を上げてニヤリと笑う。唯はぶんぶんと首を振った。

「大丈夫だよ!一人で食べれる!」
「分かってるって。パジャマ、持ってくる。」

 ドアが閉まったのを確認してから唯は自分の頬に触れた。…やはり熱い。あっくんが帰ってきてくれて安心はしたけれど、それと同時にドキドキもする。いつも以上にずっと優しいから。

「…だめだなぁ、あたし。せっかくのあっくんの貴重なお休みだったのになぁ…。」

 本当は水族館にデートに行く予定だったのに、それを自分で不意にしてしまった。それにホテルでのディナーも行きたかった。

「…あっくんも、だよね。行きたかったよね。準備してくれたの、あっくんだったし。」

 確か、大事な話があるとも言っていた。最初こそ浮気などと嫌な予感が走ったけれど、あっくんを見ていてそんなことをする暇があるようにも思えないし、あっくんの家に入り浸っている(もう母親にも紹介済みだ)ことに嫌な顔一つされないのだからそれは考えにくい。今更何を話すのか、気になってもいた。

「…嫌な話、じゃない…よね…?」
「なーにぶつぶつ喋ってるんだよ。お、食い終わったみたいだな。片付けるから寄越せ。」
「…ごめんね、ありがとう。」

 突然、唯の胸がざわつき始めた。話のことを考えるとなんとも言えない気持ちになる。

「…唯?どうした?」
「あ、ううん。大丈夫。あっくんの作ってくれたうどん、とっても美味しかった。ありがとう。お腹いっぱい。」
「その顔、大丈夫じゃねぇな。ま、話は聞くからとりあえず熱測れ。お前、測ってねぇだろ?」
「…うん。」
「その間に片付けてくるから。」

 あっくんには何でもお見通しだ。隠そうと思って唯が隠せたことなど何一つない。
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