ラブ☆ヴォイス
「じゃあ彼女さんにカケヒキってものを教えてあげなくちゃ。」
「そうしたいんだけど、彼女の良さって真っすぐさなんだよね。カケヒキとかそういう大人ぶった汚いことしないで、体当たりできちゃうんだ。そこが彼女の最高に可愛いところ。だからカケヒキなんて教えても意味ないんだ。」

 彼女の魅力が無くなるだけだから。それに、自分としてはこのままでいてほしいから。

「あらそ。ま、人の色恋沙汰に変に首突っ込んで仕事に支障出さないでよ?」
「分かってますよ、敏腕美人マネージャー!」
「そんなこと言っても何にも出てこないわよ?」
「本心で言ったのにー。」
「そりゃ光栄だわ。」

 カツカツと鮎沢のヒールの音が遠ざかっていく。そして、鮎沢がいなくなった部屋でもう一度メールを見る。
 …なぁ御堂。分かってんだろ?あの子は『アイツ』と違うよ。全然違う。真っすぐでお前しか見てなくて、ただ好きなんだ。きっと色々理由を訊けば答えてくれるだろうけど、そこに意味はない。彼女はもっとストレートにお前のことが好きだ。

「あんなに分かりやすいのにどうして信じてやれないんだろうなぁ…。嘘だって吐けない子じゃん、どう見たって。」

 思うところは色々ある。事情を知ってるだけに、言えないこともある。でも…

「唯ちゃんに任せた。」

 彼女のパワーに任せるしかない。あいつの殻を破るのは、もう君の仕事だから。
< 68 / 396 >

この作品をシェア

pagetop