ラブ☆ヴォイス
 ドアからひょこっと現れたのは、あの『声』の持ち主。何かの『役』の声とは違うけれど、ラジオで聴き慣れたちょっと低くて甘い声。顔はもちろん知っている。こんな至近距離で見るのは生まれて初めてだけど。
 …やばい。何がやばいか分かんないけどとにかくやばい……やばい、倒れそう。それしか、今の唯の頭の中には浮かばない。それしか言葉が出てこない。

「あのー…大丈夫?」
「あっ…あっ…あのっ…。」

…落ち着け自分。って無理だ。それができたら今、こんな風になっていない。無理に決まっている。だって今、自分の目の前に…。



「あっくんがここにいるーっ!?」
「うわーいきなり身バレしてるし。」



 思いきり指をさして、唯は叫んでしまった。目の前にいるあっくんと言えば、特に驚くわけでもなく、少しだけ笑って唯を見つめていた。

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