月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
悲しみの雨
赤島家の家族は、気持ちの良い人達だった。
薫さんの両親は僕の来訪を歓迎してくれ、近所に住む薫さんの兄夫婦も、酒を持って訪れてくれた。
庭を誉めると、薫さんの父は酒を注いでくる。
気の良い家族。
決して貴志君の事を口には出さない。
だが、抱えている悲しみは皆同じだと感じた。
『誰も俺を責めない…それも辛い……いっそ、立ち直れないくらいに責め立ててくれた方が楽だ……』
貴志君の葬儀の時、泣きながら呟いた先輩の言葉がふいと浮かんだ。
優しい家族だからこそ、悲しみを閉じ込めてしまうのだろう。
吐き出せないままだと、膨らんでいくばかりだと言うのに。
せめて、皆が貴志君の思い出を語れる様に導いてやりたい。
見えない涙は、確実に溢れ続けているのだ。
降り続く雨の様に……。
多過ぎる雨は、恵みにはならない。
むしろ植物を枯らしてしまう。
それは、人間も同じだ。
生きる者も、逝った者も、全て……。
だからこそ、僕はここに来たのだ。
心を枯らさない為に。
雨を止ませる為に。
それが、糸を繋ぐ僕の役目だ。
薫さんの両親は僕の来訪を歓迎してくれ、近所に住む薫さんの兄夫婦も、酒を持って訪れてくれた。
庭を誉めると、薫さんの父は酒を注いでくる。
気の良い家族。
決して貴志君の事を口には出さない。
だが、抱えている悲しみは皆同じだと感じた。
『誰も俺を責めない…それも辛い……いっそ、立ち直れないくらいに責め立ててくれた方が楽だ……』
貴志君の葬儀の時、泣きながら呟いた先輩の言葉がふいと浮かんだ。
優しい家族だからこそ、悲しみを閉じ込めてしまうのだろう。
吐き出せないままだと、膨らんでいくばかりだと言うのに。
せめて、皆が貴志君の思い出を語れる様に導いてやりたい。
見えない涙は、確実に溢れ続けているのだ。
降り続く雨の様に……。
多過ぎる雨は、恵みにはならない。
むしろ植物を枯らしてしまう。
それは、人間も同じだ。
生きる者も、逝った者も、全て……。
だからこそ、僕はここに来たのだ。
心を枯らさない為に。
雨を止ませる為に。
それが、糸を繋ぐ僕の役目だ。