月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
遺す者
舞ちゃんが両親を連れ戻って来たのは十数分後。


時間的に、月が真上に昇りきった頃だった。



明るい光は穏やかに庭の隅々を照らし、この地を幻想的なまでに浮かび上がらせる。





ああ、良い時間だ。


月を見上げ、頷く。




笑い庭を見渡すと、静かに揺れる松の木、もみじの木。





お前達も、力を貸してくれるのか…。


そうだね、皆で見届けようか。








「宗久!」


軽く息を弾ませながら、先輩は椿の隣に立つ俺の肩を掴む。



「見えたのか?!宗久!」

「貴志は…貴志は何を言っていたのですか?!」



食いつく様に質問をする両親。

その表情からは、息子を思う心が手に取る様に伝わってくる。


悲しみから、何かに縋りたい思いも。






ああ、だから…。


だから貴志君は眠れないのですよ。


あなた方の愛が深すぎて、悔やむ気持ちが痛みとなり、彼を苦しめているのですよ。






「宗久!!貴志は何を伝えたいんだ!」


肩を揺すり、僕の返答を急かす先輩。

その手を掴み、肩から外す。



「落ち着いて下さい。先輩」


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