月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
心からの声。

小さな魂からの、優しい言葉。



涙で重くなる身体に戸惑いながらも、確実に育んできた思いやり。



痛い程に切なく、そして温かい。








―お母さん…お母さんは、もっと舞を見てあげて?舞はね、お母さんの悲しさがわかるんだ。一生懸命、お母さんを笑わそうとしていたんだ。けれど、お母さんは僕の為に泣いていたから…僕もね、お母さんの笑顔が大好きなんだよ。お母さんが笑うと元気が出るんだよ―



「う…貴志……ごめんね…ごめんね…」


「お母さん、泣いちゃダメだよ。お兄ちゃんも泣かないでって言ったでしょ?」




泣き出した母親の背にしがみつき、涙を浮かべる舞ちゃん。





―舞―

「何?お兄ちゃん」

―ありがとう。舞がいるから、僕は安心して神様の所に行けるよ。お父さんとお母さんの事、舞に頼んだよ?―

「…うん!」




決して泣くまいと歯を食いしばった舞ちゃんは、力強い返事を返す。




そうだ。

舞ちゃんが一番の功労者だ。



自分のわがままを言わずに両親を励まし、兄の事もどうにかしようと一人で頑張ってきたのだ。


小さな心に強がりの鎧を着せて。
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