月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
必ず未来に在る幸せを、自らの手で掴めるだろう。



泣かずに、歩いていけるだろう。







―笑っていて欲しい。みんなが大好きだから―







貴志君の思い…。


その、変わらない思いの上に立つ決意と共に。








「宗久、ありがとうな」



車内。

ハンドルを握りながら、先輩がしみじみと呟いた。





「僕は、お礼を言われる事はしていませんよ」

「貴志の言葉を届けてくれたじゃないか。お前がいなければ、今でも俺は泣いて、貴志の身体を濡らしていたに違いないからな」




ああ…それはきっと、そうでしょうね…。



それでも必ず、いつかは僕が呼ばれていたに違いない。

目に見えない糸に、引かれていたのだから。




それが、僕の役目。



僕と出来事を結ぶ糸の……。




「導き、ですよ」

「導き?」

「貴志君が僕を呼んだのですよ。きっと」

「泣き虫な親に、一発拳を入れてくれ…ってか?そういや宗久は、空手の段持ちだったな」

「先輩が入れて欲しいなら、今からでも僕は構いませんが?」




軽く指を鳴らす僕に、勘弁してくれと先輩はおどけて笑った。
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