月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
笑いながら、先輩は溜息を吐き出した。


そうして、言葉を繋げる。





「俺は思ったよ…親が思う程、子供は子供ではないんだなって。知らない内に成長しているんだな」

「ええ、同感です」




逆に親が子供に気付かされ、教えられる事も多い。


そうしていつか、子供は親を追い越していくのだ。


心も身体も大きくなって。







「俺は、貴志を忘れたくないと思っていた。だが、そう思う程に涙が出てな…後悔ばかりが溢れてきていたんだ」

「ええ…」




気付いていましたよ。


僕以上に、先輩の子供達も。




「だがな、貴志に会えて、声を聞けて気付いた。泣くばかりでは、忘れたくない気持ちは、俺にとっても貴志にとっても悲しみにしかならないんだってな…忘れたくない思いは、笑顔でも持続できるんだ。そう、子供達に教えられたよ…」

「ええ…だから先輩は誇っていいんですよ」

「え?」

「胸を張っていいんです。だって、先輩の子供達じゃないですか」




先輩の愛を受けて育った心なのだから。






僕の言葉に、先輩は驚いた様に瞳を見開いた。


やがてその瞳に、強く穏やかな光が揺らめく。
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