月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
その笑みは僕をも安心させる笑みで、変わらない景色と同様に僕を安らぎへと誘う笑みで。
僕は再び、喜びを噛み締める。
帰って来たのだな、僕も。
愛する家族と過ごす土地に。
「もう少し、お時間がかかる滞在かと思っておりましたわ」
「僕が早く帰りたくなりました」
頭を掻く僕を見つめ、おかしな人と妻は微かに声を立て笑う。
「ですが、お戻り下さって安心しました。お正月も近いので、お義母様があなたにと新しい着物を縫って下さっておりますの。丈を合わせたいとおっしゃっておりましたから」
「それは嬉しいですね」
「大掃除にも、男手のあなたが居て下さらないと困りますし」
「…………」
それは嬉しくないな。
仕方ない。
これも家族の為なのだろうな。
箪笥の移動も障子の張り替えも、畳干しも庭の掃き掃除も……。
考え、軽く眉を潜める僕の前では、妻が良かったと笑う。
瑞江さん…良かったのは大掃除ですか?
…いいでしょう。
新しい着物との交換労働としますよ。
あまり深く考えない事で、僕は自分を納得させた。
僕は再び、喜びを噛み締める。
帰って来たのだな、僕も。
愛する家族と過ごす土地に。
「もう少し、お時間がかかる滞在かと思っておりましたわ」
「僕が早く帰りたくなりました」
頭を掻く僕を見つめ、おかしな人と妻は微かに声を立て笑う。
「ですが、お戻り下さって安心しました。お正月も近いので、お義母様があなたにと新しい着物を縫って下さっておりますの。丈を合わせたいとおっしゃっておりましたから」
「それは嬉しいですね」
「大掃除にも、男手のあなたが居て下さらないと困りますし」
「…………」
それは嬉しくないな。
仕方ない。
これも家族の為なのだろうな。
箪笥の移動も障子の張り替えも、畳干しも庭の掃き掃除も……。
考え、軽く眉を潜める僕の前では、妻が良かったと笑う。
瑞江さん…良かったのは大掃除ですか?
…いいでしょう。
新しい着物との交換労働としますよ。
あまり深く考えない事で、僕は自分を納得させた。