月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
年末は慌ただしく過ぎた。
『あなた』
『宗久さん』
『お父さん』
代わる代わる呼ばれて過ぎた様な感じだ。
それでも家族全員、無事に年を越せた事は、この上ない幸せなのだろう。
母が縫ってくれた着物は、僕が丈を合わせるまでも無く丁度であった。
さすがだなと感心する。
新しい着物。
妻と母が作った雑煮にお節料理。
お年玉にはしゃぐ息子。
この当たり前の様に過ぎる日常が、幸せなのだ。
だが僕は、思わず一つだけ個人的な幸せを望んでしまった。
家族全員で向かう元旦参り。
手を合わせる妻を横目に、祈った事。
『女の子供が欲しい』
女の子特有の舞ちゃんの愛らしさに捕われてしまったのだろうか。
あなたは何を願いました?との妻の問いに、いつもと同じ事を…と答えるしか無かったが。
そうして正月も二日目になり、穏やかさを取り戻した頃。
息子が出してきた玩具で共に遊んでいた時だ。
ポストを見に行った妻が、年賀状の束を座卓に置く。
差出人を確認していた妻が、一枚の年賀状を手に微笑んだ。
『あなた』
『宗久さん』
『お父さん』
代わる代わる呼ばれて過ぎた様な感じだ。
それでも家族全員、無事に年を越せた事は、この上ない幸せなのだろう。
母が縫ってくれた着物は、僕が丈を合わせるまでも無く丁度であった。
さすがだなと感心する。
新しい着物。
妻と母が作った雑煮にお節料理。
お年玉にはしゃぐ息子。
この当たり前の様に過ぎる日常が、幸せなのだ。
だが僕は、思わず一つだけ個人的な幸せを望んでしまった。
家族全員で向かう元旦参り。
手を合わせる妻を横目に、祈った事。
『女の子供が欲しい』
女の子特有の舞ちゃんの愛らしさに捕われてしまったのだろうか。
あなたは何を願いました?との妻の問いに、いつもと同じ事を…と答えるしか無かったが。
そうして正月も二日目になり、穏やかさを取り戻した頃。
息子が出してきた玩具で共に遊んでいた時だ。
ポストを見に行った妻が、年賀状の束を座卓に置く。
差出人を確認していた妻が、一枚の年賀状を手に微笑んだ。