月花の祈り-宗久シリーズ小咄3-
僕に頼むという事は、確かな理由があるに違いない。

人の手が届かない、出来事か何かが。



それは、届いた手紙を見た時点で感じてはいた。


未だ薄れる事の無い、むしろ強くなっている悲しみの念と共に。



その時に、覚悟はしていた。

同時に、僕にしか出来ない事だとも……。




「先輩、何を聞いても僕は驚きませんから、有りのままを話して下さい」

「……ああ」



ハンドルを握りながら、緊張の為か先輩は息を飲み込んでいる。




「実はな……貴志を見たんだ…」

「見た…」

「ああ、あれは一周忌を過ぎて間もなくだ。寝室に貴志が来るんだ。眠る俺の足元で、何か言いたげに立っているだけなんだが…」

「…それは、一度では無いでしょう?」



返答に、先輩は表情に驚愕の色を乗せた。




「…………わかるのか?」

「何となくです。その為に僕を呼んだのでしょう?」



そう、僕にはわかる。

離れていても、貴志君の気配も感じ取れる。




貴志君は、まだ上へ逝っていないのだという事も。



つまり、今回の問題はそれなのだ。




本来、亡くなった人は四十九日には上へ昇るのがルールだ。
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