恋に落ちた、この瞬間。
丁寧にサランラップで包まれている昼ごはんたちを取りだした。


サラダは…… 後でいいだろう。 今はハンバーグを温めるのが先だな。

サランラップを外したら、ハンバーグに温野菜。
朝から手が込んでる……。


これは“まお”が来るからか?
それとも…… ただの気まぐれ?

確実に“前者”だろう。


まずは…… まおの分を温めるか。

電子レンジに入れ、俺は反対側のシンクに背を預けた。


トコトコ…… 床の鳴る音が近づいてきた。

――― クイクイッ。


裾が、引っ張られた。


この部屋にいるのは俺とまおだけだから、こんな事をするのは一人しかいない。


「まお、どうした?」


あくまでも、優しく…… 穏やかな声でまおに話し掛ける。


不安なオーラ全快で近づいてきてどうしたんだよ。

ご飯は持っていってやるから、大人しくイスに座っていればいいのに。


「まお?」


「トイレ…… 貸して?」


トイレか。
まおは俺の家に来たのが今日が初めてだから、何も知らないってわけだな。



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