恋に落ちた、この瞬間。

オチタ“瞬間”。

怒鳴りつけたって言うのに、まおは案外普通。

そんなに怖く無かったとか?


「まお、大丈夫か?」


「いっくん、なの」


“いっくん、なの?”って…… お前は今まで誰か分からなかったのか?


部屋は薄暗くて、人の顔を見分けるなんて難しい。

目が慣れてくると……。


「いっくん?」


「そうだけど……」


「うぅ……」


あっ…… 顔が歪んできた。

まさかとは思うけど…… これからって。


「うっ、うっ、うわぁーーーん」


あちゃー。 泣かせてしまった。


相当怖かったのか? それとも、俺が嫌だったか?


そんな事よりこの泣いているヤツをどうにかするのが先だよな。


「怖かった、怖かったー」


「うんうん、わかった」


隅に体を寄せるまおにゆっくり近づいた。

布団に顔を埋めてシクシク…… ワンワン声を上げて泣いている。


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