-短編集-『泡雪』
私が足を踏み入れると、みな一斉にこちらをみた。
そして、ぺこっと頭を下げる。
・・・どういう意味だ。
しかし、私もよくやる癖だった。
とりあえず、目が合った人には頭を下げる、なんとなく。
ああ、なんとなく下げたんだ、そんなことを思いながら、私は案内された席に着く。
窓際だった。
隣には、ワタシも座る。
私だらけの電車は、今帯広駅を出発した。
車内は、札幌行きと告げる車掌のアナウンスが流れ、それを聞いたらたくさんのワタシ達はそれぞれ安心したように思い思いのことをはじめた。
と、言っても、ケータイを開くか、本を読むか、寝るか。
このどれかを、まるでトレーニングされた軍隊のようにみな同じタイミングでスタートさせて、本を読む者は、同じタイミングでページを繰った。
鏡の中にいるみたいだが。
なんだこれは。
きょろきょろしているのは、私だけ、といったところか。
迎えにきた「ワタシ」だけは、ちょっと違った。
席でゆうゆうと煙草を取り出してすい始めた。
「禁煙でしょうよ?」
「そんなの、関係ねー」
うーん。私よりもこのワタシは、ちょっとだけ素直というか、本能的みたい。
そして、ぺこっと頭を下げる。
・・・どういう意味だ。
しかし、私もよくやる癖だった。
とりあえず、目が合った人には頭を下げる、なんとなく。
ああ、なんとなく下げたんだ、そんなことを思いながら、私は案内された席に着く。
窓際だった。
隣には、ワタシも座る。
私だらけの電車は、今帯広駅を出発した。
車内は、札幌行きと告げる車掌のアナウンスが流れ、それを聞いたらたくさんのワタシ達はそれぞれ安心したように思い思いのことをはじめた。
と、言っても、ケータイを開くか、本を読むか、寝るか。
このどれかを、まるでトレーニングされた軍隊のようにみな同じタイミングでスタートさせて、本を読む者は、同じタイミングでページを繰った。
鏡の中にいるみたいだが。
なんだこれは。
きょろきょろしているのは、私だけ、といったところか。
迎えにきた「ワタシ」だけは、ちょっと違った。
席でゆうゆうと煙草を取り出してすい始めた。
「禁煙でしょうよ?」
「そんなの、関係ねー」
うーん。私よりもこのワタシは、ちょっとだけ素直というか、本能的みたい。