-短編集-『泡雪』
5
眠っていた「ワタシ」は、ケータイを見ていた「ワタシ」に起こされてまで窓の外を見るよう言われていた。
そういうおせっかいなところも私らしかったし、迷惑そうに振り払いながらもチラッと窓の外に目をやり、結局なにこれ・・・と呟いているのも私らしかった。
本当に、ワタシだらけの車内は私と感動のツボが同じらしく、みな窓に張り付くようにしてダイヤモンドが舞う雪原を見つめていた。
「けむたいでしょ、窓開ければ」
ただ一人、隣に座っていたワタシだけ、そういって私を小突いた。
そう思うなら、火を消してくれればいいのに・・・
と、思ったが、煙草の火を消さず迷惑そうにしている人に
「だったら、窓あけりゃーいいじゃん」
と言うあたりは、やはり私らしかった。
黙っていると、ワタシはさっさと窓に手をかけた。
「窓なんて、開くの?」
そんな列車、しばらく乗ったことなんてない。
特急だって、窓は開かない。
それなのに、ワタシが窓に手を触れると、スーッと下から窓が持ち上がり、本当に開いた。
と、同時に冷たい風と雪が隙間から入ってきた。
「え?マジで????」