-短編集-『泡雪』
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駅のホームに、ゆっくりと電車が滑り込み、ドアが開いた。
彼が先に降りて、私が後に続く。
繋いだ手は冷たく、やさしく、何度も触れたあの懐かしい感触。
そういえば、もう最近手も繋いでなんていなかった。
私はデート気分のように浮かれて、彼のほうをみた。
彼もまた、私をみたのだ。
そして、
・・・崩れた。
頭のてっぺんから少しずつ、溶けるようになって。
風に吹かれるたびに、さらさらと、ほどけた。
とめようと思っても、それはすごい早さで、瞬く間に繋いだ手も形を失い始めた。
私は慌てて彼の手をぎゅっと強く握る。
いなくなってしまわないように、抱きしめる。
だけど、それがトドメになってしまったように、一気に彼は、形をなくし、残ったのは私の手の中に残る、雪。
そしてそれもすぐ、雫にかわりはじめるのに。
私は、あまりのショックにホームに座りこんだ。
彼の欠片が散らばる雪の中に。
手の中には、泡雪。