-短編集-『泡雪』
―――と、いうわけなんです。はい、はい、・・・
どこかで聞いた声がした。
毛布のような感触が、首にあたる。
今まで嗅いだことがないようなにおいのする部屋だ、病院ではないだろう、そういうにおいじゃない。
どちらかというと、うーん
考えているなら目を開けたほうが早いだろう。
そう思ってまぶたを開くと、今朝列車のダイヤが乱れていると教えてくれた若い駅員が電話でなにやら話していた。
私が起き上がったのをみて、若い駅員は電話をきった。
そして、
「目がさめましたか!!いやー、びっくりしましたよ、僕あんな経験初めてだから!」
と、興奮して話してくれた。
私が、あの吹雪の中、朝からずっとホームの隅で座り込んでいたと。
そして、それに誰も気づかなかったうえ、意識を失うまで放置されていたと。
「ふつーなら、誰かはわかるし気づくと思うんですよねー、こんなこと、ないんですよ、ふつー!」
時計を見ると、午後1時。
私が、ファーストフード店でワタシに会ったくらいの時間だ。
どこまでが、現実でどこからが夢なのか・・・
聞くのも恥ずかしい。