-短編集-『泡雪』
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駅地下の商店街、アピアから階段を昇って、ガラス張りの真っ暗な待ち合わせ場所へ。
大きなテレビのスクリーン前で、くじ引きが行われていた跡がある。
そんな、時期だよね…と独り言を言いながら、
長い階段を一段ずつ、ヒールの高いブーツで踏みしめ、私は自分がお城に向かう途中のシンデレラのような気分になった。
勿論、今魔法がかかっているのではなく、長く彼に対して抱いていた、
片思いにも似た未練という名の呪縛から解けたような思い。
今日会えたら、すっきりできる。
言えなかった『ごめんね』が素直に言える。
『ありがとう』だって、伝えていなかった。
私、大切にしてもらいたがるばかりで、
彼を大切にしていなかった。