-短編集-『泡雪』
第2話:凍てつく、嘘
幸人はいつも、
『おまえじゃなきゃ、駄目なんだ』
って言った。
それは私が、人のものだった時から。
彼氏のことは、愛してた。私だって、彼氏じゃなきゃ嫌だから、
幸人のそんな言葉、全然響かない。
でも、共感はした。
ああ、幸人も私と同じ気持ちなんだ、互いに思い合う方向に矢印は向かないけど、
この人じゃなくちゃダメって気持ち、わかり合える人だと思った。