-短編集-『泡雪』
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クリスマスをきっかけに、私達は何度も抱き合った。
距離ばかりでなく、心まで離れていった彼に、いまだ追いすがるようにして連絡をとり続けていたけど、
幸人は、知ってか知らずか、私には一言も、あの彼氏のことはまだ好きかと聞いてこなかった。
幸人は会うたびに、私が疲れ果てて眠ってしまうまで、何度も求めた。
そうされることは、嫌じゃなかったし、なにより、
何もかも、忘れられるのはその瞬間しかなかった。
冷たい冬の風が私の頬を掠めるたびに、
今頃、あっちは雪も降らず、私を思い出すこともなくて、暖かい場所で新しい彼女と……と、
否応なしに、彼を思い出した。