-短編集-『泡雪』
ホールは吹き抜けになっていて、二階の目の高さに窓があり、そこからは薄曇りの空から

冬の午後らしい柔らかい光が降り注いでいた。


窓枠には、びっしりと雪がはりつき、表では穏やかに小雪がちらついている。


彼は今頃、地下鉄を降りて白い息を吐きながら、この店までの裏道を歩いているだろう。

久しぶりの雪に足をとられながら、

私に会うために……

私に、言葉を用意して……

それは、別れかもしれない。

なんだっていい。

とにかく、会いたい……

早く、来て……



そう願いながら、コーヒーカップを両手で包むと、冷えた掌が熱で痺れた。


< 43 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop