-短編集-『泡雪』
−−久しぶりの、ふたりきりの夜なのに。
私は、触れることはおろか、触れられることさえ、怖くて抵抗した。
いつものように、10時半から送られてくる、幸人のメール。
季節はずれのクリスマスの着信音は、彼とひとつになった記念日だからと、二人で気に入って同じメロディーにしていた。
『メール、きてるよ』
『うん、いい…』
さすがに、三回連続で同じ着信音が続き、
そのうえ、他の友達からのメールで別の着信音が一回混ざったところで、
『なあ、なにか、隠してないか。なあ』
彼は、私を正面に見据えて、両腕を掴んだ。