-短編集-『泡雪』
また、もう一度。
今度は着信だった。
『…ったく、なんなんだよ!!』
哲哉は、私の携帯をとる。そして
『あ、ちょっと、まってやめて…!!』
−−幸人
画面に表示されている、男の名前。
彼はそのまま、電話に出た。
『はい。…はい、そうですが、……はい…はい?……ええ、いいですけど、はい…僕は今彼女の家で一緒ですよ、はい…』
『やめて!!』
私は、携帯をとりあげて、無理矢理きった。
そのまま、哲哉には問い詰められることもなく、話した内容も明かされることはなく、
妙な沈黙だけが流れて、私達は別々に床に着いた。