-短編集-『泡雪』
……パチッ
窓に、何かあたる音がした。
小さい雪玉?氷の粒?
誰か、あてた?
すると、眠ったとばかり思っていた彼がむくっと起きて、寝室を出ていく。
時計は……真夜中の1時、ちょうど。
だけど私は、起き上がれずに、そのまま寝たふりを続けた。
明かりが漏れないように、寝室のドアをしっかり閉めて、彼が出かける準備をしている。
どうしよう……
誰?
もしかして、女?
彼の指輪さえ信じ切れず、ここまできてもまだ、一人ぼっちにされた数カ月を恨み、彼を疑う。
自分が醜い。
そして、呼吸することさえ、惨めだ。
彼に捨てられる勇気もないくせに、彼を疑って、裏切って。