-短編集-『泡雪』
彼女はそう呟くと、自身から白く降り積もった『罪』に
目を伏せて倒れ込んだ。
躯の形に罪は美しく窪みその中央で微笑み、僕に
――罰を。
いや、罰なんかじゃない。
僕達の罪に罰なんか初めから生まれようもないんだ。
風に揺れる枯れた広葉樹と
葉を落とさずに尖る葉を身に宿らせ、罪に縁取られる針葉樹なら
僕らは
枯れない事を選び、
そして凍てつく世界に生きることを、
選びとった『人間』だったんだ。
生きてる。
僕らは生きていた、罪の重さに枝をへし折られる事も畏れずに。