-短編集-『泡雪』
するとすでに、彼女は血が通っていないのではないかというくらい冷たい手をしていて、

僕の手が彼女の温もりを引き出して余計な痛みを生んでいるのではないかと、

一瞬戸惑った。

だけど彼女は

「ありがとう。でも、礼二も冷たいね。手」

そう言って、

強く握り返してきたから


僕は、ああ、そうだったのか、冷たい手をしていたのか、温かいつもりだったと少し恥ずかしくなり、


俯いたら

雪が染みて斑尾模様になった枯れ葉色のブーツが、すでにスネまで雪に埋まり

見えなくなりかけていた。


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