-短編集-『泡雪』
『こんな風になってしまう事をわかっていたら、彼は私を好きにならなかった』

私はいつも、そう自分を責めた。


彼に優しくされる度に、私の事を病人に憐れむような目つきでみているのではないかと、

自己嫌悪をそのまま、彼への不信感に変えていった。


『どうしたの?』

という言葉は、

『どうしちゃったの?』

という言葉へと、勝手に私の中で変換されて、


私はますます、心を塞いだ。



−−『優しくされること』に、私は馴れていなくて。


人の言葉で癒される方法を知らなかったから。



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