-短編集-『泡雪』
彼を疎ましく感じだすと、止められなかった。

自分で一緒にいたくない、一人になりたいと部屋を追い出しておきながら、


その時間、夜の街で遊んでいるだろう彼を、ますます恨んだ。


否、『羨んだ』の間違いかもしれない。


彼の明るさが、優しさが眩しくて、

ジメジメと暗がりに生息する苔のような女の私は、息が詰まっていったのだ。



< 7 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop