-短編集-『泡雪』
彼を疎ましく感じだすと、止められなかった。
自分で一緒にいたくない、一人になりたいと部屋を追い出しておきながら、
その時間、夜の街で遊んでいるだろう彼を、ますます恨んだ。
否、『羨んだ』の間違いかもしれない。
彼の明るさが、優しさが眩しくて、
ジメジメと暗がりに生息する苔のような女の私は、息が詰まっていったのだ。
自分で一緒にいたくない、一人になりたいと部屋を追い出しておきながら、
その時間、夜の街で遊んでいるだろう彼を、ますます恨んだ。
否、『羨んだ』の間違いかもしれない。
彼の明るさが、優しさが眩しくて、
ジメジメと暗がりに生息する苔のような女の私は、息が詰まっていったのだ。