-短編集-『泡雪』

しかし俺は、あいつのかみさんに同情しかけてやめた。

なぜなら

よく見ると彼女にはやつれた様子も無く、身なりもきちんとして、
むしろ、俺の妻だった女を見て

勝ち誇ったように、薄笑みを浮かべた。

それは、精神に異常をきたしたような種類のものではなく、

確実に見下し、生を誇示するような、氷よりも冷たい眼差し。


そして、俺は聞こえてしまった。






< 72 / 118 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop